【書評】中国経済講義 統計の信頼性から成長のゆくえまで

中国経済講義書評
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書評

こんにちは
悟です。(@rxf7oqjSU4v473O



今回は梶谷懐さんの「中国経済講義:統計の信頼性から成長のゆくえまで」を読んだのでその書評を書いていきます。

「講義」という題名から難しそうに思えますが、著者が「アカデミックな議論の水準を踏まえることだ、表面的な変化に流されない、腰の据わった中国経済の概説書を提供したい」とい思いをウェブ上でのインタビューにて答えています。

本人の談話通り、既往の研究や統計がふんだんに盛り込まれており、私自身知らないことがありすぎて本が付箋まみれ、赤線まみれになってしまいました。

感想

私たちは中国について知らなすぎる

この一言に尽きます。

薄汚れたピカチュウや一部のマナーの悪い観光客など、どうしても自分で見聞きしたものだけで国という大きなものを判断してしまいがちです。

本書の目次と概要

序章 中国の経済統計は信頼できるか

経済データが信用できない理由の一つに、統計システムの大幅な変更があります。また、その変更により様々なデータが非連続的なものになってしまうことも多くの研究者が統計データを疑問視する理由です。

第1章 金融リスクを乗り越えられるか

中国の通貨である人民元は、1日の価格変動を抑えるために「管理変動相場制」を用いています。更に、国際収支の偏りや政治の不安定さから、人民元の信頼度は高くありません。

第2章 不動産バルブを止められるのか

中国経済は、国内投資を原動力に成長を続けてきましたが、それが一因となり不動産バブルを引き起こしています。

また、土地制度にも改革が必要で、土地の用途によって価格が異なっており(住宅は高く、工場は安い)その価格差が年々拡大しています。このように市場のゆがみも中国経済の信頼度を低下させる問題点の1つです。

第3章 経済格差のゆくえ

中国では、住んでいる地域によって社会保障の厚みが異なります。もちろん手厚いのは大都市で、農村部になるとほとんど整備されていません。

年々上昇する不動産価格と相まって、持てる者と持たざる者の格差が拡大していることが示唆されています。

第4章 農工民はどこへ行くのかー知られざる中国の労働問題

戸籍上の問題、流動性の低い農村部の土地、申告しなければカウントされない失業など、中国の労働市場の行方を予想するのは不可能に近いです。

第5章 国有企業改革のゆくえー「ゾンビ企業」は淘汰されるのか

どの国でもそうですが、国有企業は経済成長の足かせになってしまいます。

韓国などがその例ですが、中国ではHuaweiやテンセント、アリババなどが国内のみならず世界的な影響力を持つレベルまで来ています。

政府としては、ハイテク企業が伸びていく環境を構築しつつ。国有企業の解体をソフトランディングさせていけるかが焦点になります。

第6章 共産党体制での成長は持続可能かー制度とイノベーション

パクリ大国のイメージが根強い中国ですが、一方で先に登場したハイテク企業によるイノベーションも盛んにおこなわれています。

中国経済のエコシステムは非常に深く興味深いものです。

終章 国際社会のなかの中国と日中経済関係

日本では中国に対して、あまり良い印象がないように思えますが、世界一の大国になるであろう国のお隣という立地は計り知れないほど大きいものです。

中国が豊かになれば、日本の工業、農業、サービス業は莫大な人口メリットを受けることになります。

中国は先進国の仲間入りができるか?

以下では、上で紹介した目次の中から特に重要だと思った部分についてまとめています。

皆さんは中国の将来をどう考えますか?

中国は識者の中でも見通しが割れてしまうかなり特殊な国です。

政府の出す経済成長率がウソではないか…

中国経済は早晩行き詰まる…

政府主導で格差が縮小し現在の成長が継続する

本書の前半では中国経済の見通しが何故そこまで揺れてしまうのかについて説明されています。

簡単に分けると

  • 統計制度の変更
  • 独特の戸籍制度
  • 流動性の低い土地制度
  • 国内格差の是正
  • 国有企業の改革

の4つです。

それぞれが欧米や日本とは大きく異なる制度であるゆえに、識者の間でも評価が割れてしまっているようです。

中でも中国国内の格差は経済力の異なる国が1つの金融政策に縛られているユーロ圏と重なる部分が多いです。

中国内部の現状を知ることが現在EUが抱える問題と重なるのは非常に興味深いです。

とはいえ、現状の制度を変えていく必要があることは共通の認識のようで、ここで書くと長くなってしまいますし、私の理解が及んでいない部分も多いので本書を読んでもらいたいと思います。

貿易摩擦は百害あって一利無し

現在トランプ政権のもと、中国製品に多額の関税をかけ、中国もそれに報復するという形で貿易摩擦が激化しています。

大統領としては国内産業を守りたいという考えがあるはずですが、実際は米国企業も痛みを伴うことになりそうです。

現在は製造業も細分化され部品単位での生産が世界のいたるところで行われています。

それは米国と中国も例外ではなく、米国企業が基礎部品を国内で生産し、中国で組み立て、完成品を再び米国へ輸出するという「米米貿易」が盛んに行われているようです。

製造業では、どの国のメーカーであろうと世界中に、サプライチェーンが発達していますので、他国に関税をかけることで国内企業も相当なダメージを負うことになりそうです。

まとめ

中国は日本を遥かに超える経済大国になりつつあります。

本来なら中国と健全な関係を構築し、中国に寄り添うことまで考えなければならない段階まで来ていると思います。

それでも政治的な対立は深刻で、世界的にも中国製品を締め出しにかかり、ますます実態を理解しないままイメージだけ悪くなっていく様子が残念でなりません。

本書のような中立で確かなデータを示す本が広まってもらいたいです。

英語の次は中国語を勉強したいなと思っています。乞うご期待!