こんにちは
悟です。(@rxf7oqjSU4v473O)
今回は「ディープラーニング活用の教科書 先進35社の挑戦から読むAIの未来」を読んだので書評を書きたいと思います。
本書を手に取ったきっかけは、この夏インターンシップにいく企業の社員さんが登場するとのことで、事前準備として一読しようと思ったからです。
正直あまり、この分野に関する知識がなかったのですが、本書を一読することで外観はつかめたかなと思います。
1章から5章までは事例集。最終章がAIをビジネスに落とし込む上で重要な心構えなどが書かれています。
前半は興味のある部分を読んで、最終章は何度でも読み返すべき内容がつまっています。
目次
本書の概要
本書の内容を章ごとにまとめました。購入の参考にしてください。
第1章 ディープラーニングの発展予測
ディープラーニングをはじめとするAI技術の多くは発展途上です。AI技術をビジネスに活用したい企業も増加しており、現在のAIのレベル感の共有が必要です。
東京大学、松尾豊氏が作成したこのロードマップが多くの企業で参照されています。
現在は、運転や農業の一部自動化や、これまで人の勘に頼ってきた部分を網羅的に解いてしまう最適化が進んでいる段階と言えます。

ディープラーニングをベースとするAI技術の発展
第2章 [Step1]人の「眼」となり単純作業から解放する
「人が判断できるなら、機械でもできる」
この発想のもと、商品を置くだけで、値段を計算してくれる自動レジや、1つの見積書の画像から、類似の保険を提案したりする、単純作業の削減が進んでいます。
ある業務の負荷を軽減することで、リソースを別の業務に回すことができるようになります。
第3章 [Step2]「五感」を担い行動予測や異常検知を実現
河川や電線などインフラの点検には多くのリソースが投入されています。
異常なしが大半を占める中、業務負荷を減らす期待がされています。
法整備が必要な分野もあるようで、完全な普及には時間が掛かりそうですが、業務削減に大きく貢献しそうです。
第4章 [Step3]現実社会に柔軟に対応「ロボット」「自動運転」の時代
ディープラーニングの「眼」が外界を認識し、画像以外のさまざまな情報と併せて理解を深めることで、ロボットや機械が熟練者と同様の動きをできるようになってきました。
これまでのロボットや機械は限定的な世界のみでの活用でした。現実の世界で動かしていくためには、場面の理解と予測が必要です。
第5章 「創作」業務へも広がる活用範囲
デザイナーなどクリエイティブな仕事にもAIの活用範囲が拡大しています。
NHKアートの白黒画像をカラー画像に復元する作業や、データグリッドのアイドル顔の自動生成などAIは私たちの想像を遙かに超えるところまで進化しています。
データグリッドのアイドル顔は本当にすごかったので、ぜひ見てみてください。
第6章 ビジネス活用の勘所を理解する6つの問
現段階でAIが最大限活かせる分野は、「製品・サービスの付加価値の向上」「オペレーション効率化や業務プロセスの最適化」です。
これらは、人間が「なんとなくでもよい答えがわかっている」が、「どれが最適か」という結論が出せない分野で有効です。
AIの中身がブラックボックスになっているため、正しい答えが全く分からない問題を解かせても判断ができません。
AI以外でも解決できる課題が多い
AIはどの企業でも活用の余地がありますが、本当にAIでなければならないかは、吟味する必要があります。
自分の研究室でも「AIでなにかできないかな?」とAIありきで考えてしまうことがあります。
実際はAIなどを使わなくても、従来通りのカイゼンやこれまでの研究成果の活用で十分のケースもあります。また、一口にAIといっても、活用に耐えられるデータが必要です。
本書にはAI活用に適したデータの要件が書かれていたので紹介します。
- 正規化・成形されていて、AIが読み解くべき情報のみに整理されている
- データを説明する情報が多い(データベースでいえば列の数が多い)
- 可能な限り個別の情報が特定されている
- 欠損がない
- 偏りがない
- データ数が多い
特に3番目は、データの粒度という意味で、「大人」よりも「30代」、「30代」よりも「35歳」の方がデータとしての質が高いです。
粒度を荒くすることは簡単にできますが、その逆は元データにない限り不可能です。
そういった意味では、AI活用を見込んだデータ収集が必要です。
AIを活用したい企業でAIを企画できる人材になる
本書では最新のAI活用事例がたくさん紹介されています。それでも、AIについて理解している企業人は少ないといわれ、企業での活用が今一つ進まない要因と言われています。
一般的にAI人材といわれますが、このあいまいな言葉も本書で整理されています。
- 活用を経営レベルで判断する意思決定者=AI推進経営者
- ビジネス活用する現場の人=AI活用人材
- AIを開発する人=AI開発者
- AIのためのデータを準備する人=データ収集・整備人材
グーグル・クラウド・ジャパンの下田氏と日経クロストレンドより
本書でたびたび登場するAIを開発し巧みに使いこなす企業は、もちろん上記すべての人材を抱えています。
それを生業としているので、当然といえば当然です。
多くの企業では、メインの業務が別にあるため、AI開発まですべて自社で行うのは難しいですし、時間もかかります。
そのため、AI開発者とデータ収集・整備人材は、他社にアウトソースしてしまうのも有力な選択肢となります。
ですが、そもそもAIについて知らない、AIを使いこなせない人ばかりでは、いくら画期的なものでも利用できません。
これからの時代、どんな企業であっても、AI活用人材くらいは確保したいところだと思います。
そのAI活用人材についてはtiwakiの阮氏が次の技術を知っておくべきであると整理しています。
- AI技術にはどのような技術、どのような特性があるか
- AI技術の強み、弱み
- ある技術を応用するためい必要なリソース(計算リソース、データなど)
- 現在流行しているAI技術の全体像
- (研究者・技術者は特に)現在開発している新しい技術のトレンド
ちなみにこれらの知識を満たすためには、日本ディープラーニング協会のG検定が適しているようです。自分も学部3年のころに存在を知っていれば、受けていたかもしれません。
なにはともあれ、今後ディープラーニングをはじめとするAI技術はビジネスの現場では当たり前になってくるはずです。
学生の視点に立てば、AIに関する素養があることを示すには資格は有効な手段になるはずです。
A検定はAIエンジニアを目指す人よりは、文系や理系でも専門外の人が取得するのが向いているように思います。
その人が大学で学んできた専門性に加えて、ほかのスキルがあると掛け合わせで希少性を作ることができます。
話がかなりそれましたが、AIを仕事に活用したいと思っている企業人や、AIに興味のある学生におすすめの中身となっています。
単なる事例集だけでなく、今後AIを利用していく人に向けた考え方などもまとまっています。