こんにちは
悟です。(@rxf7oqjSU4v473O)
今回は「プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボールリポート1」を紹介します。
本書は近年注目を集めるセイバーメトリクスを中心に最新の調査をもとに新しい指標の妥当性や改良、野球を楽しむための新たな視点の紹介が書かれている本です。

野球観戦が好き、野球をもっと知りたいという方におすすめです。
マネーボールは単純に読み物として面白いのでおすすめです。
セイバーメトリクスの考え方的なものを知るにはこちらの本がおすすめです。
目次
どんな本?
本書の内容は先ほど紹介したように、セイバーメトリクスの内容が中心で、指標の妥当性の検証や改良といった、なんとも理屈っぽいというか論文に出てきそうな言葉が並んでいます。
そんな難しい本は読めないし読みたくもないと思われてしまうのも嫌なので、何ページか見てみることにします。

セイバーメトリクスの基礎
前半はセイバーメトリクスの基本的なキーワードについて説明されています。
最も重要なのは「勝利は得点を増やし失点を減らすことで追及できる」という部分です。
これ以降出てくるセイバーメトリクスの指標はすべてこの目的に沿っており、打撃指標は「得点を増やせるか」、投手や守備に関する指標は「失点を防げるか」という考え方が根底にあると考えてください。

セイバー・メトリクス・リポートの後半
後半は、それぞれのトピックについて考察や分析結果が掲載されています。
本書のメインにあたる部分です。
本書の内容
本書の内容を簡単にまとめてみました。
セイバーメトリクスの基本的な考え方
セイバーメトリクスの歴史
状況に応じた打撃はどこまで可能か(市川 博久)
野手のタッチ技術ータギング試論(大南 淳)
WBCを通じたNPBと他国の投球傾向の比較(水島 仁)
指標の有用性をどう考えるか(蛭川 皓平)
千賀滉大・則本昂大両投手の三振に見る配球の文脈(Student)
守備範囲評価の複数年化(岡田 友輔)
セイバーメトリクスを使いこなすには
セイバーメトリクスはいまだ発展途上の新しい分野と言えます。
テレビ中継でトラックマンのデータが表示されるMLBでも、現在進行形で新しい指標が生み出され、勝利の追及が行われています。
そういった中で、指標を問題視する意見もあるのが現実で、様々な誤解が生じています。
本章では、セイバーメトリクスをめぐるこれらの問題点について整理されており、セイバーメトリクスの全体像を把握するのに役立ちます。
この記事を読んでいる方は、おそらくセイバーメトリクスに多少の興味を持っている方だと思いますので、セイバーメトリクスを何となく使い始めている人に読んでもらいたいです。
指標は完璧ではありません。
それぞれ考慮している数字としていない数字がありますので、数式の暗記よりも、数式の意味を理解するようにしましょう。
これは完璧でないからダメだということではなく、「これまでの指標に比べれば、完璧に近いから利用する」という考え方です。
実際に、未完成のセイバーメトリクスを活用して、強豪チームに成長した例もあります。
セイバーメトリクスに入門する方であればどちらも必読です。
セイバーメトリクスの利用【守備指標】
それでは守備指標を例にとってセイバーメトリクスを利用してみましょう。
これまでの指標
少しさかのぼると野手の守備力を図るには、捕殺数や刺殺数、あるいは守備率くらいしかありませんでした。
しかしこれらの指標には、守備範囲や打球の難易度などが考慮されていません。
例えば
- 守備力が高いことで、打球に追いつきエラーしてしまった。
- 守備力が低いため、そもそも打球に追いつけずヒットになった。
この2つを比較すると、これまでの指標では2の方が守備のうまい選手だと評価されてしまいます。
そこで登場したのがUZRです。
新しい指標UZR
UZRは、フェアグランドを細分化し、ゾーンごとの打球処理上の責任を算出し重み付けし守備の貢献度を図る指標ですので、少なくとも、捕殺や刺殺、守備範囲は考慮されており、最終的な数値は打撃による貢献と合算できるメリットがあり、少なくともこれまでの指標と比べると画期的な指標です。

UZRの概念
問題点としては、同一リーグ内の相対評価のため、他国のリーグやセパをまたいだ比較ができない点、ポジションごとで比較できないなどがあげられます。
そのため、通算UZRなど、年度を跨いだ比較には向いていないことになりますが、少なくともリーグ内で守備No.1を選出するゴールデングラブ賞などの参考にはできます。
今後利用されるかもしれない技術【ダギング】
本書では、セイバーメトリクスに関する最新の研究も掲載されています。
メジャーで利用され始めた指標の日本での応用や、分析が始まっている指標など野球オタクには嬉しい内容が盛りだくさんです。
その新しい技術の中の1つが「Tagging(ダギング)」です。
ダギングは盗塁時やけん制などのタッチの技術のことです。
ダギングの名手として有名なのはシカゴ・カブスの内野手ハビアー・バエズ選手でしょうか。
2016年のワールドシリーズで脚光を浴び、彼の見せた、盗塁を狙った1塁走者へのタッチがあまりにも高速だったことでアメリカの野球データサイトでも紹介されました。
本章は、タッチ技術の評価の可能性、具体的にはどのポジションで必要とされる技術なのか、タッチアウトへの影響度はどれくらいか、実際にタッチスピードは選手間でどの程度差があるのか言及されています。

ポジション別タッチアウト数
こちらの表は、2014年から2016年までの3年間のタッチアウトの数を集計したものです。
アウトの数は記録されていますが、どのポジションの選手がタッチをしたのかは記録されていないため、2塁上でのアウトは2塁手と遊撃手で半分ずつカウントしています。
本章では具体的にNPBで誰のタッチがうまいのか、UZRやWARへの組み込みなどまでは議論されていませんが、今後さらに発展していく指標なのではないかと思われます。
まとめ
ごくごく僅かですが、本書の内容を紹介してみました。
ここには書きませんでしたが、守備範囲評価の複数年化という章や、の千賀滉大・則本昂大両投手の三振に見る配給の文脈という章も面白かったです。
スタジアムでの生観戦も楽しいですが、データを使って様々な角度で選手を評価することでさらに野球を楽しむことができると思います。
第2巻も出ているのでこちらも読んでみてください。