【書評】セイバーメトリクスの落とし穴 マネーボールを抱える野球論(お股本)

書評

こんにちは

悟です。(@rxf7oqjSU4v473O

今回は、Twitterで話題となったいる「セイバーメトリクスの落とし穴 マネーボールを超える野球論」を読んだので、ご紹介します。

私は野球が好きで、セイバーメトリクスも勉強中なので、著者であるお股ニキさんもフォローしています。

近頃話題の「スラッター」や「2番打者最強論」などは、他に詳しい方がたくさんらっしゃるので、私は本書後半部分の監督や球団経営などについてコメントしていきます。

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本書の目次と概要

本書の目次を簡単にまとめてみました。購入の参考にしてみてください。

第1章 野球を再定義する

野球は常に自分と相手の力関係によって決まるため、すべての数字は相対指標です。個人タイトルとなる防御率やホームランもすべて当時のリーグ水準によって決まります。1970年と2019年のプロ野球は選手のレベルも環境も全く違うということを改めて認識しておきたいものです。

第2章 ピッチング論 前編(投球術編)

プロで長年活躍するためには、多少手を抜きながら相手を押さえる力と、それを継続する再現性が必要になります。

第3章 ピッチング論 後編(変化球編)

最近話題のスラッターは、直球のような軌道から、カットボールのように鋭く、スライダーのように曲がる球種のこと。

第4章 バッティング論

現在のスタジアムの大きさだと、大半の打者はHRを打つことが可能です。なにも150m飛ばす必要はなく、HRになるのに必要な距離を飛ばすためには、適切な角度で打ち上げることが重要です。

第5章 キャッチャー論

人間がストライクを判定する以上、見る角度やボールの侵入経路の微妙な違いにより、ストライク・ボールどちらとも取れるエリアは存在します。その微妙なエリアをストライクにする技術がフレーミングです。

第6章 監督・采配論

名選手が名監督になれる訳ではないということは現在のプロ野球を見ればよくわかると思います。「自分たちの野球」に固執し負け続ける姿も散見されます。

第7章 球団経営・補強論

日本はMLBに比べて、大物選手の移籍が少ないため、ドラフトも外国人選手も「目利き」のウエイトが非常に重要になります。MLBは数年経てば新顔がリーグ上位に食い込んできますが、日本では一度低迷すると大型補強がない限り、長期間続きやすくなります

第8章 野球文化論

日本の野球好きは、野球そのものではなく、「個別のチーム」や、全力プレーの「高校生」、海外で戦う「侍」に対するものかもしれません。もちろん、それでもいいのですが、野球ファンのレベルアップには、野球の中身を理解した人々の存在が必要です。

広島には少なからずFA補強が必要である

ここからは、本書を読んだ上で押し球団である広島東洋カープについて自分の思うことを書いていきます。

丸移籍の埋め合わせは適切だったか

2019年シーズン広島のビッグイベントといえば、2年連続MVPの丸佳浩選手のジャイアンツへの移籍でしょう。

これまでFA補強に消極的だった広島ですが、今回ばかりは丸の残留に向けて最善を尽くすとともに、一部ファンでは、長らく不在の三塁手兼大砲候補としてレアードの獲得を望む声もありました。

結果としては、丸は移籍、新外国人選手は投手のみ、FA補強はおろか戦力外からの補強もありませんでした。人的保証では、丸の代役として長野を獲得しました。

正直、カープファンであれば、ここまでは予想できると思います。以前から移籍のうわさのあった丸が残ってくれる可能性は低いし、バティスタ、メヒアのいる外国人野手は一見、埋まっているような気もします。

その点で、長野の獲得は良い意味で誤算と言え、今シーズンに関しては最善とも思える動きです。

更に、西川、坂倉、高橋などプロスペクトもいるということで、「今シーズンもどうにかなる」という慢心があったのではないかと思います。

ただ、これら3人が丸に変わってどの程度の成績を残すかは、完全に博打といってもいいと思います。

1軍経験の少ないプロスペクト

西川こそ100試合の出場がありますが、送球難から本格的な外野コンバートとなります。今シーズンを見る限り、打球判断も良く、外野適正があるようで一安心ですが、これも丸が移籍してから取り組むのは危険すぎる話ではないでしょうか。

また、注意しなければならないのは、サードを守っていた西川が外野に移っただけなので、これでは打線の解決には全くなっていません。むしろ、松山、長野、高橋といった元から外野にいた選手と競合し、デプスのゆがみにもつながっています。(もちろん西川を活かすという点では良い考えではあります)

そして、トッププロスペクトと定評のある坂倉は1軍出場はわずか9試合しかなく、レベルの上がる1軍のボールを打てる保証はありません。打者は常に、投手のボールに対し受け身であることから、ドラフトや新外国人でも、即活躍する選手は投手が多いです。

そんな中、1軍経験の少ない坂倉を急造の外野で、攻撃力を求められるのは酷な話ではないでしょうか。今シーズンは會沢がFAを取得することもあり、本来であれば、今シーズンを1軍になれるシーズンとして出場機会を確保し、備える必要があるはずです。

ましてや、今シーズンの活躍が必要なのであれば昨年からある程度の試合数を経験させる必要があったはずです。鈴木や丸ですら、フルシーズン出るまでに数シーズン掛かっています

最後の高橋大樹はあまりなじみがないかもしれません。(先日初HRを記録しましたね)数年前から2軍でやることが無いと一部ファンで言われており、早く1軍に上げろと言われ続けてきた選手です。彼は、非常にかぎられた出番の中で結果を残しており、全体的に低調な広島野手陣において唯一の希望とも言える存在です。(監督には嫌われているのか、HRの翌日にはスタメンから外されてしまいます)

気づいた人もいるかもしれませんが、丸がいなくなったことで、丸の代わりが出来る「外野探し」に躍起になり、丸がいないのにも関わらず外野が飽和してしまっています。

フロントと監督が連動しているのか

カープは現在でもGMというのは存在しません。オーナーの松田家が編成などの決定権を持っていますが、そもそもフロントと監督の意思疎通が出来ているか疑問に思うことが多々あります。

今村は先発候補ではなかったのか

楽天の某GMなどと違い、そもそも編成に対して明確な考え方があるとは思えませんが、一般的にGMやフロントといったチームの最上部は、中長期的にチームを作っていく責務があるはずです。

言葉に出しては言いませんが、「今年の優勝は厳しいから育成の年にしよう」、「○○が台頭してくるまでのつなぎとして△△を獲得しよう」など冷静な判断が求められるポジションです。

それに対して監督は、契約年数も数年であり、成績が悪ければ解任されてしまうため、目の前の勝利を目指すことになります。このようにGMなどと監督は考え方が異なります。

 私がこの差を以前から思っているのは2009年ドラフト1位「今村猛」の育成です。今村猛は当時エースだった前田健太の後継者として期待されていました。これは間違いありません。

プロ1年目は二軍で先発起用されていましたし、2年目のオープン戦は先発起用でした。それが、いつの間にか中継ぎとして28歳にして400登板を達成するに至っています。2年目にして最速は154キロに達しており、今のプロ野球でいうと、オリックス山本由伸と重なる部分があります。

もし、当時のオーナーが先発での育成を求めていたら…と思わずにいられません。中長期的に考えれば、高卒2年目でそのポテンシャルであれば、田中将大、ダルビッシュ有、前田健太などをモデルとし先発育成するのが最善です。

この件については別記事にしようと思いますが、本書にも書かれているのですが、フロントと監督、目的が異なる両者の意思疎通は必ず必要だということです。

まとめ

 本の内容というより、自分のカープ愛を語るような内容になってしまいました。

 これまでの野球本は、選手や監督個人にフォーカスした自伝のようなタイプが多いですが、本書の著者はそもそもプロ野球選手でもなく、プレイヤーとしては素人のツイッタラーです。現場から離れている人間の、マクロ的で冷静な視点が本書の1つの特徴でしょう。

一般的なプレイヤーが、他の選手の育成方針やマネジメント面まで踏み込んだ話をするのは、時の政権批判になったり、個別の選手が浮かんで来がちです。本書は、これまで触れられてこなかった、日本野球のこれまでとこれから、長所と短所が忖度なく書かれており、野球好きの方には必ず一読してほしい本です。