【書評】いま世界の哲学者が考えていること

いま世界の哲学者が考えていること
いま世界の哲学者が考えていること
書評

こんにちは

悟です。(@rxf7oqjSU4v473O

今回はダイヤモンド社から 「いま世界の哲学者が考えていること」を紹介したいと思います。

日本で哲学と言えば、「生き方」のような「人生論」か、カントやニーチェについて延々と語る大学教授のイメージが強いです。

しかし本書の哲学はカントの「啓蒙とは何か」という論文に書かれている内容に大きく影響を受けており、「われわれの身に何が起ころうとしているのか?」というテーマで書かれています。

「私たちの身に起こること」、具体的に言うとIT革命、バイオテクノロジー、資本主義制度、宗教、環境問題などです。

どの項目も私たちに直接関係あることですが、テレビや本でも偏った視点や強引な理論が目立ち、なかなか本質的な理解をすることができません。

本書を読んで、問題の本質を理解して正しい視点を持つようにしましょう。

本書がオススメな人

現代社会で話題になっている問題について興味がある人

哲学という学問に興味のある人

本書の目次

本書の目次を簡単にまとめてみました。購入の参考にしてみてください。

第1章 世界の哲学者は今、何を考えているのか

現在の哲学は、ポストモダン以後の世界について歩みを進めており、それを「ポスト言語論的転回」といいます。科学技術との連携により、行動経済学や神経経済学、神経倫理学のような新しい分野が出来つつあります。

第2章 IT革命は人類に何をもたらすのか

GoggleやAmazonに代表されるIT企業群によって、私たちの情報はほぼすべて記録されている状態となっています。それ以外にも、マイナンバーなどによって、私たちは自動的に監視されている状況です。現代版「パノプティコン」と言ったところでしょうか。

第3章 バイオテクノロジーは「人間」をどこに導くのか

ゲノム編集の発展により、神の領域へと進みつつあります。現状、ゲノム編集は、一部の動物や植物に限定されていますが、人間へ応用されるのも時間の問題です(中国ではゲノム編集された赤ちゃんが誕生したというニュースもありました)。それによって、優生学を復活させてしまう危険性もあります。

IT技術の発展により、書物にもとづく「人文主義」が終わり、バイオの発展により「人間主義」が終わろうとしています。

第4章 資本主義は21世紀でも通用するのか

格差は本当に悪なのか考える必要があります。全く格差のない社会、つまり全員の持っているものが同じという共産主義が良いということでしょうか?

よくよく考えると、格差が悪なのではなく、道徳的に考えると「貧困」が悪と考えることができそうです。

また、グローバリゼーションのトリレンマをご存知でしょうか。ちなみにジレンマは、二者択一ですが、トリレンマは三者択一ではなく、三者択二、3つの中から2つ選べます。

その3つの道は「ハイパーグローバリゼーション」、「民主政治」「国民国家」です。

第5章 人類が宗教を捨てることはありえないのか

この章は非常に難しくあまり理解できていません。ひとまず言えるのは、科学によって宗教がなくなることはない、ということです。この世のすべてを自然科学では説明できないからです。例えば、国家などです。

第6章 人類は地球を守らなくてはいけないのか

環境保全はこれからも重要視されることとは思いますが、じゃあどのくらい守るの?という問いには答えるのが難しいです。環境へのインパクトをゼロにしようと思うと、人間の数があまりにも多すぎるため、人口を減らさなければなりません。そんなことができるはずもなく、結局は人間にとって都合のいいエゴなのかもしれません。

クローンの何が悪なのか?

「クローン人間」というと、なにか人間のコピーやSF映画的な危険なイメージを抱いてしまいますよね。

動物の実験ですら、嫌悪される非常にデリケートな分野です。

ここではクローンの原理を理解しなければなりません。

一般的に言われるクローンとは体細胞クローンと言われ、受精前の卵子から核を取り除き、そこに精子ではなく、他人の細胞の核を移植する方法です。

そこから生を受けるには、子宮に戻し通常の出産を経る必要があります。

なので、クローンは細胞の核(核に入力された遺伝情報)が同じということになります。

実は遺伝情報が同じ人間が身近にいる人もいます。

それは一卵性双生児です。

一卵性双生児は一つの卵子から生まれた双子のことです。

二卵性双生児は受精前の卵子が二つに分かれ、その後別々の精子を受精したものです。

なので一卵性双生児は遺伝情報が同じで、二卵性双生児では血液型が違うケースもあります。

なので、クローンは年齢の違う一卵性双生児ということができます。

しかし一卵性双生児を怖いものと扱う人はいません。

人の人生を生まれる前から操作してしまう可能性が私たちの感覚的に容認できないのはわかります。

では、生まれる子供が遺伝的に病気を発症してしまう可能性が高い場合、それを回避するのもダメなのでしょうか。

科学者のリチャード・ドーキンス氏は

科学と倫理は共に、何が善で何が悪かという問いには答えられない

というコメントを残しています。

どこまでが環境保護なのか

「環境にやさしい」「エコ」といったワードは毎日のように見聞きします。

農学部である私にとっても環境保護は重要な問題です。

私たちの生活でも、レジ袋ももらわないようにしたり、消費電力の小さい家電を選んだり色々な場面でエコな暮らしをしようと努力します。

では、どこまでやればエコなのでしょうか?

レジ袋をもらわず、マイバックにすればエコなのでしょうか?

これは現在ではレジ袋が一般的だからマイバックにすれば。エコに見えるだけで、マイバックが一般的な世の中であれば、マイバックがエコではないという理論になるような気がします。

消費電力に関しても、現在の平均より良ければエコ認定されるだけで、究極を言ってしまえば、家電を使っている時点でエコではないという理論になります。

環境保護というと、現代の便利さを全て捨てた昔ながらの牧歌的な生活をイメージしている人もいますし、便利さをそのままに、田舎へ移住し、「環境と調和した生き方」のような勘違いをしている人もいます。

これはディープ・エコロジーと呼ばれる考え方に影響を受けています。

ディープ・エコロジーとは、動物も植物も全てが平等で、等しく尊重されるべきだという考え方です。

エコロジーの根底にある考え方は本来こういうことなのです。

ディープ・エコロジーの目標を達成するには、世界の人口は10億人程度まで減少させる必要があると言われています。

現在行われている環境保全活動が完結する為には、ここまでやる必要があるということです。

まとめ

本書ではこのように、普段は当たり前のこととして流してしまっている「バイオテクノロジー」や「環境保全」などについて問題の根本から掘り下げて考えさせてくれる内容です。

当たり前を問い直す大切さを教えてくれる1冊だと思います。